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ほとばしる情熱 〜三上慎司先生来訪記 その2
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    (承前)三上先生が受験に向けた指導をご覧になりたいと言われたのでその日は中3の授業を行うこととし、先生の特別授業では数学をお願いした。教材は中3範囲は一応終了していることを伝えただけでお任せしたのだが、先生が選ばれたのは都立共通問題。平成25年の大問4だった。先生には事前にウチの生徒の大まかな成績と雰囲気は伝えてあったのだが、さすがのチョイスにまず唸った。


    教材選定には「何を教えたいか」という教師の意図がはっきり現れる。この問題は取り立てて難しいものではないが、テキストという単元別学習から入試問題という総合的学習への橋渡しとして非常に好適な内容を含んでいる。中3範囲は終わったばかり、それほど数学が得意な生徒はいない、というウチの生徒のレベルをしっかり考えた、いわば「思いやりのある」選択だ。そこには難問や鮮やかな解法をもって生徒を唸らせたり、自身の得意分野に生徒を引き込んで力を見せようというてらいはみじんもない。


    一方で先生が選んだのは我が都立の入試問題。他塾でのいわば「他流試合」で、自身のやりなれた得意技ではなく相手の流儀にのっとるというわけだ。そこにはもちろん他塾訪問に対する礼儀もあるだろうが、そちらの土俵で自分の力を見せる、見せたいという野心もあるに違いない。この問題選定から、三上先生の誠実さと、内に秘めたやってやろうという情熱をともに感じずにはいられなかった。


    授業は問題演習→解説という流れで始まった。先生は問題演習は厳しめの時間を設定し、生徒が終わってなくともきっちりと区切られた。私はもう少し粘らせたいという思いがあれば時間延長は辞さないのだが、こういうところに指導の思想は現れる。入試での到達・実現という観点から考えたらどちらがよいのだろう。恐らくどちらも正解だ。必要なのは一貫した姿勢である。


    解説が始まる。ロカビリー先生のブログで拝見した通り、柔らかな語り口で間の取り方がうまい。大手塾で研修を受けたとは思えない(失礼)、自然体のあり方だ。生徒とのやりとりで時折挟む「〜やな」「せやな〜」という関西弁がさらにその雰囲気を強くさせる。早口で下町弁バリバリの私の指導に慣れた生徒達の表情からは、集中しながらも非常にリラックスした様子がうかがえる。


    今回の先生の数学の授業は「情報の取り方」「予測」、「レファレンスからの情報量」「布石を打つ」に集約される。なんだか偉そうにまとめているが、塾講師なら誰でも意識する、極めてオーソドックスな授業技術だ。しかしそれを1つの授業の中で、それも他塾での訪問授業で発揮するのは簡単ではない。それを三上先生は堂々と展開された。


    「情報の取り方」と「予測」。問題文から、条件を丁寧に読み取り、例えば「この図形は正方形だろうな」などの設問意図を予測・推測しながら読み進める。これはやり過ぎると解説が迂遠になって生徒が混乱する。かといってここをかっ飛ばすと、できる生徒しか養成できない授業になる。何事も塩梅が難しい訳だが、三上先生の導入における情報の取り方と予測は、濃すぎず薄すぎず、絶妙な「塩梅」で生徒の問題理解を深めた。


    「レファレンスからの情報量」。解説を進めるにつれ、レファレンスが多くなる。証明問題がある。「じゃあ三角形の合同条件を言ってみて」―これは普通。そこから「じゃあ直角三角形の合同条件は?」―あ、それも?その後「平行四辺形になるための条件もあったよね?あれ覚えてる?」まで進んだ。この一連の流れが、何の無理もなくスムーズに展開される。予測もレファレンスも、ただ多くするだけならそれほど難しくない。授業準備をこってり積み上げればいいわけだ。文章でその時の空気感や流れを説明するのは難しいが、こうした内容を無理なく授業の流れに乗せるのは相当しっかりした技術がなければできない。


    「布石を打つ」。これはこの3つの中で一番難しい。ここでもやはり必要なのは自然な流れ。生徒達はその流れを理解し、復習で自分の中に落とし込んで実践で使える武器にする。不自然なら理解が滞るし、復習の際に意識が弱くなる。三上先生はその布石を、小問解説で設けた。問3を解くための布石を問1で設け、赤字で板書しておく。それを問3で「さっきのあれやな!」と大きな声で強調された。先生はご自身のブログで淡々と書かれているが、その時、教室の空気はピリッと一変した。2年前、赤虎先生の塾で上江州先生による日比谷英語の解説を聞いた際、上江州先生がキーワード発問でそれまでの雰囲気を一変させて徒達に強く迫った、あの空気のコントロールを思い出した。三上先生も上江州先生にその技術については聞いていたのだろうか。それとも自然に出たものなのだろうか。後者だとしたら凄いことだ。いや、これは教わっていても、そう簡単に実践できるものではない。おそるべし、三上慎司(続く)。



     
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